【第33回占領開拓期文化研究会】
日 時:2019年12月26日(木)
研究会 13:30〜 忘年会 18:00〜
場 所:同志社大学室町キャンパス 寒梅館6階大会議室
会場アクセス:京都市営地下鉄烏丸線 国際会館行「今出川」駅上がって北へ2〜3分
忘年会会場:イタリアンレストラン uenoyama
【発表次第】
1、 後藤大介(同志社)
二人のトニー ──村上春樹「トニー滝谷」論──(仮題)
・対象作品:村上春樹「トニー滝谷」
※『村上春樹全作品1979〜1989⑧』(講談社、1991年7月)、『レキシントンの幽霊』(文藝春秋、1990年10月)
2、 加藤大生(同志社)
・タイトル:享楽としての「敗北」――花田清輝「大秘事」論――
・対象作品:花田清輝「大秘事」(『世界』1966/10)
※『花田清輝全集 第十三巻』(1978、講談社)、花田清輝『鳥獣戯話・小説平家』(1988、講談社文芸文庫)
3、 八原瑠里(立命館)
・タイトル:横光利一「青い大尉」試論(仮題)
・対象作品:横光利一「青い大尉」(1927/1) 、「青い石を拾つてから」(1925/3)
※『定本横光利一全集 第二巻』(1981/8)
※ 「青い石を拾つてから」への言及は参考程度とのことです。
〈第32回占領開拓期文化研究会〉
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日 時:2019年9月15日(日)
場 所:大谷大学 慶聞館4階K404教室
会場アクセス
京都市営地下鉄烏丸線 国際会館行「北大路」駅上がってすぐ
JR京都駅から乗車時間約13分
プログラム
幹事あいさつ 14:00〜14:10
研究発表1 14:10~15:10
中井祐希(立命館大学)「戸坂潤の全集未収録作品について」
研究発表2 15:20~16:20
坂堅太(三重大学)「〈垂直〉を解体する―安部公房『榎本武揚』のアクチュアリティについて―」
研究発表3 16:30~17:30
栗山雄佑(立命館大学)「目取真俊『眼の奥の森』論――残響する声・傷付けられる身体」
臨時総会 17:30〜18:00
懇親会 18:30〜20:30頃
※市場小路 北大路ビブレ店(予定)
※1人あたり4,000円程度
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佐々木幸喜氏 安部公房「デンドロカカリヤ」の素材と構成
佐々木氏は、1949年8月に「表現」へ発表された版である安部公房「デンドロカカリヤ」を取り上げ、安倍が登場人物それぞれの立場を描き出す上で拠っている文献に関する分析を行なった。具体的には、語り手である「ぼく」は「ダンテの神曲」、「ドゥイノの悲歌」に、コモン君は「一冊のギリシヤ神話」、H植物園長はカー・アー・ティミリヤーゼフの「植物の生活」内の記述に依っているとのことであるが、私は発表を聞きながら安倍がどのような経緯でティミリヤーゼフの著作に触れたかに興味を抱いた。経緯については調査中とのことであるが、今後の研究の展開を楽しみにしたいと感じた。また、個人的な興味としてデンドロカカリヤ=ワダンノキをめぐる戦後の小笠原諸島の問題にも興味を抱きながら発表を聞いていた。質疑応答は、坂堅太氏や岩本知恵氏、程非凡氏などといった安部公房研究者が揃ったこともあり、非常に活発な意見の交換が行われた。質疑の中では顔を境界にした人/植物への変化を扱った他の作品との発展の可能性や、安部が作品に進化論を取り入れた意味などが意見として提示された。発表や質疑応答を聞きながら、改めて安部公房研究の活発な状況を窺い知ることができた。
轟原麻美氏 司馬遼太郎『坂の上の雲』論――柳原極堂「友人子規」との比較から――
轟原氏は、司馬遼太郎『坂の上の雲』と柳原極堂「友人子規」を比較し、『坂の上の雲』などの司馬作品に対する「本当らしさ」の生成過程を探る発表を行なった。発表では、司馬『坂の上の雲』内の記述が、ことごとく柳原「友人子規」内の記述に酷似していることが示された。もちろん司馬は細部を書き換えてはいるものの、あまりの酷似ぶりには驚きあきれる思いを抱かざるをえなかった。ただ、司馬に限らず歴史的事象を扱う文学作品において、証言や記録といった典拠の記述をいかにして独自の表現に昇華させるか、もしくは研究者もそのような作家の苦悶の痕跡をいかにして捉えることが可能か、このような問題提起としても今回の発表は非常に示唆に富むものであったと感じた。轟原氏は結論において、「史実に100%基づいて書いた」といった司馬の言説を覆すことができると述べていたが、前回の轟原市の発表と併せ、あらためて『坂の上の雲』をめぐる言説の問題が浮き彫りになったとの感を抱いた。また作中における方言について、誰が正誤のチェックをしていたのかといった疑問が質疑応答でなされたが、私も沖縄の文学を扱う上で作家が使用した方言については注意しなければならないと常々思っていたので、この問題についても轟原氏のさらなる考察の提示を期待したい。
両氏の発表後、泉谷氏によって占領開拓期文化研究会の第1期の終了と、次回からの新体制移行の報告が行われた。詳細はあらためてメンバーに連絡されるとのことであった。
(文責:栗山雄佑)
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